室井大資が天才でよかった。俺たちはそういう世界に生きているという話。
今回はめずらしく、エクストリームマンガ学園の裏側の話をしようと思います。
いつの間にかこの企画も一年ちょっと。よく、読者の方に「どこで作品と出会うのか?」「どうやって見つけるのか?」と聞かれるので、普段のマンガの探し方をお伝えします。
基本的には直感(プロキックボクサー時代、試合中に急に音が消失してフワフワした空間の中で戦えるようになって以降、謎の脳の部位が覚醒して、マンガとかCDのジャケ買いを外すことがなくなったし、ヤバそうな本は書店で光って見える)なので説明はしづらいのですが、ネット上で流れてくるマンガの告知ツイートや新刊情報で絵が好きそうなものは、必ずその場で版元の公式ページの第一話試し読みを読みます。必ずその場でです。あとからはダメです。絶対忘れるし、二度と出会わないので。あと、月に1~2冊は普段読んでない雑誌を無作為に買います。急に「こんなジャンルも読んでるの!?」というマンガを好き好き言い出すときはこれで当たりを引いたパターン。
エクストリームマンガ学園の作品の選び方ってのは3つあって、まず1つ目は「やりたい作品が決まってる時」で、これは説明不要。『TAXI』とか、『よふさぎさま』とか『ゴリラとの結婚』とかです。
2つ目は「作品決まってないけど、今応援したい作家さんの過去の作品を依頼」で、これはまず、その作家さんに依頼する前に、単行本未収録作を可能な限り調べ、買えるものすべて買います。プレミアついてようが気にせず全部買った上で交渉スタートするので出費が異常に膨れ上がりますが、なんの準備もせずに「応援したいんだけど何か面白いのないっすか~?」と近づくような雑な仕事は自分の中にはないので、出費はしょうがないです。つばな先生とかふみふみこ先生などがこのパターンです。その過程で色々なアンソロジーに手を出すことになるので、そこに載ってた別の作家さんの読み切りも全部集めたりするため、コストパフォーマンスが悪い方にすごくなり、毎回のギャラはこういった行為で完全に消費されます。
3つ目が「完全に1から発掘」。とにかく、自分の知らない所で面白い読み切りを描いている作家さんがいないかどうか、過去10年くらいのアフタヌーンの四季賞の小冊子がついてる号を全部遡って買ったりもしました。1冊5000円とかになってるのもあるので、これも燃費が最悪です。基本的には、古さやレア度より、「今やる意味があるかどうか」を優先する感じですね。
たまに作家さんや版元さんから「この作品を紹介してくれませんか」と依頼を受けることもあるのですが、これに関してはすべてお断りをしています。独断と偏見の企画ですし、自分が面白いと思わないものを人間関係で紹介するようになったら、それはただの一回だけでも自分の終わりを意味するからです。ただし、熱意あるアクションをかけてくれる人は大好きなので、必ずその作家さんの本を最低一冊は買うようにしています。
そんな感じで、いつも言っていますが「面白いのはマンガであって自分ではない」。あくまで自分は「意志を持った付加価値」。調子に乗らず、「大量の鴨を自分で仕入れてくるネギ」みたいなギリギリのバランスを心掛けたいですね。
ちなみに、紹介作家さんともともと交流があるかどうかはバラバラで、今まで紹介した20人くらいの中で、「なんとなく相互フォロー」よりも深めの親交があったのは5人くらいですね。企画の依頼はだいたい「初めまして」から始まります。
そんな感じで今後も人間関係に頼らず、真摯なスタンスでの仕事を心掛けていきたいですね。


と言いたかったところなんですが、なんと、劇画狼さんと室井大資先生、人間関係ズブズブでございます! 今回の作品も、飲みの席で作品を読む前に決まりました。
エクストリームマンガ学園の作品の選び方その4、「酒の席で『なんか面白いのないっすか~?』とド失礼に聞く」です。そのたったの一回で、俺は終わりです。
でもまあ作品を読ませてもらったらめちゃくちゃ面白かったので、室井大資が天才でよかった。と思ったのでした。謎の脳の部位が覚醒しててよかった。
ちなみにこの『みなもとみなこ』はこの1本だけではなく、連作短編のスタイルなので、室井先生に今回の話を見せてもらった後、最低限の礼儀として、他の話を読もうと、プレミアついた一万円のアオハルを購入したんですが、残念なことに今回の話が載っている号を買ってしまったのでした。その怒りで、今この原稿を書いています。
大資、愛してるよ。

全然関係ないですが、キックボクサー時代に結構強いパンチを効かされた時に「自分の一番古い記憶」を思い出したので脳って不思議だなーと思うのですが、その理屈だとリングで死ぬ人は「生まれた時の記憶」にまで遡って思い出してるんじゃないかと思います。
次回4/14、みなさんの驚く顔が楽しみです。



《初出》
「アオハル」0.5号 2011年 集英社

《室井大資先生情報》
沢田新名義で原作担当、『バイオレンスアクション』を読め!
http://yawaspi.com/violence_action/index.html
『寄生獣』の岩明先生とタッグを組んで作画を担当、『レイリ』は最高だ!
http://www.akitashoten.co.jp/comics/4253131352
あと俺は『イヌジニン』が好きだからアレをアレして!
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%83%8C%E3%82%B8%E3%83%8B%E3%83%B3-%E2%80%95%E7%8A%AC%E7%A5%9E%E4%BA%BA%E2%80%95-%E9%9B%BB%E5%AD%90%E6%96%B0%E8%A3%85%E7%89%88-%EF%BC%91-%E5%AE%A4%E4%BA%95%E5%A4%A7%E8%B3%87-ebook/dp/B01MQW74VP
(とりあえずamazonリンク貼ったけど、好きなところで買ってね)

更新日

: 劇画狼

マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。得意ジャンルはエロ劇画とコンビニコミックス。好きなマンガは将太の寿司。

 

関連商品

恐怖の口が目女


魔法はつづく